【注目記事】 愛媛新聞・社説「反格差デモ 富と権力の再配分を急ぎたい」

愛媛新聞」特集社説2011年10月19日(水)
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201110196272.html

反格差デモ 富と権力の再配分を急ぎたい

 反格差社会デモ「ウォール街を占拠せよ」はニューヨークで始まり、全米各地の都市に波及。さらに日本や欧州、アジア各国にも拡大した。

 「われわれは99%だ」。市民がプラカードを掲げ、富を独占する1%の富裕層や大企業を批判する。単純で明快な主張が多数の若者を動員し、大きなうねりとなって富の象徴である各都市を埋めた。

 格差是正を求める運動は、何も今回が初めてではない。これまでも金融、雇用危機などの節目ごとに、不満はデモとなって表出してきた。

 背景には、大量消費システムの隅に置き去りにされる社会的弱者の存在がある。国際社会はあらためて、格差是正に向けた取り組みの重要性を再認識すべきであろう。

 ただ、今回のデモ行動は一律にくくれない。要求する内容も方向性も多様だ。

 イタリアやギリシャでは緊縮財政や増税、ユーロ防衛をめぐる批判を連呼。ドイツでは若者や労組が社会的弱者への連帯を呼びかけた。

 また日本では反原発、ニューヨークでもオバマ大統領の評価から人種差別糾弾、戦争反対まで、あらゆる社会問題のるつぼの様相を呈した。

 これまでにない形での、一般市民を含めた多彩な運動と見たい。通底するのは、各国が強行してきた弱者切り捨て政策への共通した不信だ。

 差別や貧困の解決策を一向に見通せない不安が、一斉に噴出したと見るべきだろう。

 加えて連鎖の要因として、グローバル化時代に入り世界の枠組みが変容しつつあることを指摘しておきたい。

 かつて世界を主導した主要8カ国首脳会議(G8)は富と権力の象徴であり、幾度も反グローバル化のデモにさらされてきた。そのG8も20カ国・地域首脳会合(G20)に主要舞台を移しつつある。

 先進国の寡占時代は終わり世界はなおダイナミックな変化を続ける。格差のない国際社会の再構築を希求し、デモがデモを呼んだといえる。

 見逃せないのは、いまやG20の国内総生産(GDP)合計が世界のGDPの9割に上るという現実だ。実は、今回のデモでさえ、おおよそG20内での要求にすぎない。

 依然として横たわるこうした世界の格差問題を思えば今後、より深刻な貧困層による是正要求は必然だ。残り1割のGDPを分け合う途上国が抱える貧困問題を、国際社会が放置してはなるまい。

 むろん日本も、国内格差の是正は急務だ。同時に、先進国としての国際的な役割、国際貢献の意味をあらためて自覚しなければならない。

 「富と権力の再配分」は、資本主義社会が抱える永遠の課題である。デモはこのテーマへの、具体的な回答を求めているともいえる。