【10・21国際反戦デー『琉球新報』社説】「10・21」と不平等 均しからざる国を患う

【『琉球新報』社説】
「10・21」と不平等 均しからざる国を患う
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-183065-storytopic-11.html

2011年10月21日

 「不患寡而患不均」。孔子とその高弟たちのやりとりを集め編纂(へんさん)した『論語』の中にある有名な一節だ。日本語では「寡(すく)なきを患(うれ)えずして均(ひと)しからざるを患う」と読む。

 16年前のきょう「10・21県民総決起大会」が開かれ、9万1千人(先島地域を含む)が米兵による卑劣な犯罪を糾弾し、在沖米軍基地の整理縮小と日米地位協定の見直しを強く訴えた。

 県民は米軍基地問題に潜む不平等、不公正を指摘し、その矛盾の放置が人権侵害だと告発し続けてきた。大会当時と今の県民に共通する思いは人権軽視への怒りであり、まさに「寡なきを患えずして均しからざるを患う」ではないか。

 歴代政府は不平等の問題の本質を糊塗(こと)し、県民を基地依存経済へ誘導する“アメとムチ”政策を繰り返した。同じ愚を繰り返してはならない。

 日本の総人口のおよそ100分の1の沖縄が在日米軍専用施設の74%を抱える状況を100キロの荷物に例えると、県民は1人で74キロを背負い、本土住民は99人で26キロ、1人平均262グラムを持つ計算となる。構造的差別に本土住民も思いを巡らせてほしい。

 基地問題は、日本社会の矛盾とも通じる。政治評論家の森田実氏はかつて「寡なきを患えずして均しからざるを患う」の故事を引き合いに、小泉政権の5年間に「中央と地方」「大企業と中小零細企業」「国民生活レベル」の格差が拡大したと批判した。

 国民の熱狂的支持を集めた「小泉構造改革」の功罪について、この国はきちんと総括していない。それが「格差」というツケを後続の内閣が処理できず、短命に終わった大きな要因ではないか。

 環太平洋連携協定(TPP)への参加に反対する山田正彦農水相は「参加すれば農業だけでなく金融、医療、保険、通信、司法など幅広い分野で米国流の新自由主義ルールに基づく規制緩和、自由化を迫られる。(中略)貧富の格差が広がり、日本の国の形が根底から変質しかねない」と述べる。

 民主党内のこうした批判は健全な民主主義、言論の存在を示す。沖縄と日本が抱える矛盾に通底する本質的問題が格差や人権状況の不平等性であることも理解したい。

 経済的・軍事的利益を突出させた政権運営は根本的見直しが必要だ。野田佳彦首相に政治家の良心と胆力をあらためて求めたい。