【毎日新聞】 講演:「脱原発、独市民が選択」 緑の党副代表・ヘーンさん講演 /京都

講演:「脱原発、独市民が選択」 緑の党副代表・ヘーンさん講演 /京都
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20111027ddlk26040636000c.html

 ◇再生可能エネルギーで経済効果

 日本でも風力など再生可能エネルギーへの注目が高まる中、ドイツ「緑の党」副代表のべーベル・ヘーンさんがこのほど、京都精華大京都市左京区)で講演。同国で再生可能エネルギーによる脱原発が支持を集めた理由を「理想論によるものではなく、メリットが認識されたから」と説明し、今後のビジョンを語った。【太田裕之】

 元々主婦だったヘーンさんは、工業地帯での生活で息子がぜんそくになったことから、産廃処理場進出反対の市民運動に参加。その後、州議会議員、州環境大臣などを歴任し、05年から連邦議会議員を務めている。今回の来日では、福島県の被災地や福井県原発群を視察した。

 講演でヘーンさんは、原発について「核廃棄物を100万年も管理しなければいけないなど不合理。着陸先がないのに飛行機を飛ばしているのと同じ」と指摘。同国が「脱原発」を決定したことについて、EU委員会などの政治権力や経済界が原発を推進する中で市民が脱原発を選んだ、と強調した。

 ドイツでの発電全体に占める再生可能エネルギー原子力の割合は、緑の党が連立政権に参加した99年には5・2%対30・6%だったが、11年には20%対17%と逆転。23年には全原発廃炉にして、再生可能エネルギーで40%以上を賄うことを目指すという。さらに、20年までに20%の省エネを目指しているとも述べた。

 同国では、再生可能エネルギーへの市民の投資に対して年3・5%の利益がある。雇用面でも原発の3万人に対し、再生可能エネルギーは40万人で、省エネ技術でも25万人の創出を見込む。ヘーンさんはこれらの環境産業が「リーマンショック以降の同国経済を支えており、数年後には自動車産業より大きくなる」と述べ、環境と経済が両立する「グリーン・ニューディール」の考えを強調した。

 ◇日本での運動進展を評価

 欧米などに比べると、日本では一般的にデモなどへの市民の参加は低調。その日本での反原発運動の展望を参加者から問われると、「日本でもこの半年の進展に驚いている。3・11直後は数百人規模だったデモが5万人を超えたことをもっと評価するべきだ。事故の影響は何十年も続くが、まだ半年が過ぎただけ。動きは今後もっと広がる」との見方を示した。

 さらに「大事なのは数よりも効果。お金が無くてもアイデアを絞り、楽しく喜びが生まれるようなアクションを」と助言。「推進派には金があるが、理想がある市民の方が負けるわけがないと信じよう」と呼び掛けた。

毎日新聞 2011年10月27日 地方版